「相続分の放棄」が含まれる遺産分割協議 |
「相続分の譲渡」と違って、「相続分の放棄」については、民法の条文にありません。
さらに、「相続分の放棄」が含まれる調停による相続登記については、可能であるとする先例(登記研究819号189頁)があるものの、遺産分割協議による場合の先例がないため、「相続分の放棄」についても、法務局も対応に困りながら処理されているのが現状です。
「今回だけです」と言われながら受理された事例、「放棄を譲渡に修正して欲しい」と、補正を求められた事例等があります。 |
未成年者が含まれる遺産分割協議 |
「未成年者が相続人になる場合、家庭裁判所で特別代理人が必要になる」というのが一般的な知識として存在します。親権者自身も相続人になることが多いためです。
しかし、親権者自身が相続人でない場合は、親権者が遺産分割協議に参加し、代理して遺産分割を行うことができます。
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被相続人が登記上の住所に、住所を置いた証明が必要 |
相続による名義変更に必要な戸籍謄本を、完全に揃えておられる場合。
例えば、事前に、金融機関の相続手続を済まされている場合なども含みますが、相続による名義変更登記特有の必要書類として、「被相続人の住所の証明書」があります。
金融機関の相続手続きでは、一般的に要求されない書類であるため、どうしても不足してしまう、ということになりますが、相続登記に必要な書類の中で、「不足書類が被相続人の住所証明だけ」であるような場合は、司法書士が実費のみで、取得させてもらっています。 |
不動産の個数が複数になる場合 |
不動産の個数。土地の筆数が何筆になるのか、というのは、不動産の現場を見ているだけでは、分からないものです。
見た目は1つの土地でも、複数の地番が振られた土地に分かれている、ということもあることだからです。
司法書士・行政書士吉田事務所の報酬基準。
相続登記の基本報酬66,000円は、「相続人さんが3名まで、不動産は4筆まで」の報酬額とさせてもらっています。
人数が増えられたり、筆数が増えると、その分、司法書士側の手間と負担も増える、という考え方によります。 |
不動産売却が決まっている場合の相続登記 |
不動産の売却が決まっておられ、不動産業者さんにも仲介を依頼されている状態で、相続による名義変更のご依頼を受けることがあります。
一旦、相続人名義に変更してからでないと、売却による所有権移転の登記ができないためです。
「不動産業者さんからのご紹介で」ということもあります。
不動産業者さんからのご紹介の場合は、後日、売却による売り渡しの手続きもさせていただき(売主側の司法書士として参加)、相続登記の費用は、売却代金を受け取られた時に清算させていただく、ということもあります。 |
遠方からご依頼いただく相続登記 |
「堺の不動産だから」と、堺市にある当事務所に、遠方からご依頼いただくこともあります。
「遠方からのご依頼だから」と、お断りすることはありませんが、司法書士の事務的な都合を考えますと、必ずしも「不動産所在地の司法書士事務所のほうがいい」と、探して頼まれる必要はないです。
司法書士は、基本的に、不動産の現地確認をせずに、名義変更の手続きを行います。
また、管轄の法務局へは、「オンライン申請+添付書類は郵送」という手段で、登記の申請ができるためです。 |
未登記家屋の名義変更届 |
法務局で登記がされていない、「未登記の建物」については、少なくとも、「未登記家屋名義変更届」を提出しておきます。
少なくとも、課税台帳の名義が書き換えられて、次年度の固定資産税は、名義が書き換えられた相続人宛てに、課税通知が届く、ということになります。
※表示登記は「義務」であり、登記義務を怠った場合は10万円以下の過料に処する、ということになっていますが、特に古い建物の場合は、「未登記」が珍しくなく、実態と法律が乖離しています。
(建物の表題登記の申請)
不動産登記法第47条
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。 |
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森林を取得した時の届出制度 |
山林の相続による名義変更をする場合、市長村長に対して、森林の土地の所有者の届出が必要とされています。役所への届出のため、行政書士業務となります。
堺市内にも、「山林」は存在します。
相続された土地がある場合、遺産分割協議がされていなくても、「相続開始の日から90日以内に、法定相続人の共有物として届出しなければならない」とされていますが、一般の方には行き届いていない情報です。
届出をしない場合は、10万円以下の過料が科されることがある、とされています。
(森林の土地の所有者となつた旨の届出等)
森林法 第10条の7の2
地域森林計画の対象となつている民有林について、新たに当該森林の土地の所有者となった者は、農林水産省令で定める手続に従い、市町村の長にその旨を届け出なければならない。
ただし、国土利用計画法による届出をしたときは、この限りでない。 |
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農地法による相続の届出 |
農地の相続については、市町村の農業委員会への届出が必要とされています(農地法第3条の3第1項)。平成21年12月15日以降に発生した相続が対象になります。
役所への届出のため、行政書士業務です。
本来は、相続が発生した時点で、一旦届出。
遺産分割が終わって、相続による名義変更をする際に、もう一度提出となりますが、一般の方が「先に届出を済ます」というのは、難しいことです。
実務上は、遺産分割協議で相続人が確定し、法務局での名義変更の手続きが終わった後に、農業委員会に届出書を提出しています。
(農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)
農地法 第3条の3
農地又は採草放牧地について第3条第1項本文に掲げる権利を取得した者は、同項の許可を受けてこれらの権利を取得した場合、同項各号(第12号及び第16号を除く。)のいずれかに該当する場合その他農林水産省令で定める場合を除き、遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。 |
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団体信用生命保険適用による抵当権の抹消 |
住宅ローンの契約者の方が亡くなられ、団体信用生命保険(団信=だんしん)が適用になる場合、保険で住宅ローンが完済扱いとなり、金融機関が抵当権を抹消するための書類を発行してくれます。
その場合、
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1.相続による名義変更登記
2.抵当権の抹消登記
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の順番に、登記を入れることになります。
相続登記の初回ご相談時に、金融機関からすでに抹消書類を発行してもらわれ、持参される方もおられれば、抹消書類を発行するためには、「先に相続登記を済ませて下さい」という方針の金融機関もあります。
同じ銀行によっても、その時々によって、団信の進め方が違う、ということもありました。 |
法定相続情報証明の申請 |
法定相続情報証明は、司法書士が相続手続きをする側に立つ場合。
遺産承継の手続きを受任する場合も、便利な書類です。
特に、相続手続きが必要な銀行・証券会社の件数が多い場合は、後々の負担軽減を考えて、先に、法定相続情報証明を取得するようにしています。 |
被相続人の住所証明が出ない場合の相続登記 |
相続による名義変更に際し、被相続人が、登記上の住所に置いた証明が役所で出ない場合は、権利証を添付して補います。
相続登記に、権利証は基本的に必要ありません。
但し、住所の記録がつながらない場合、また、保存期間の経過で、役所で住所の証明書が廃棄されているような場合は、権利証をご用意いただくことなります。 |
建物の登記上の面積と、課税上の面積が違う場合 |
登記上は、附属建物あり。
評価証明書では、附属建物なし。
市役所に問い合わせたところ「付属建物のデータはなく、滅失している可能性もある」とのことでした。相続人の方に聞いても、現況は不明。
登録免許税について、あるものとして、残価率を使って計算すべきか、その場合、築何年とすべきか。
また、ないもとして、課税明細の金額で計算すべきか、法務局によっても、また、その時々でも法務局の見解が違うため、法務局に相談票を入れて照会します。
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今回は、建物の課税上の評価に対して、u単価を出して、附属建物があるものとして計算する、という結論になりましたが、残価率を使って計算、と言われることもあります。
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複数の管轄法務局に相続不動産をお持ちの場合 |
複数の管轄法務局に、相続された不動産をお持ちの場合、その法務局の管轄ごとに、所有者の名義変更登記を申請します。
例えば、
・堺市の不動産は、大阪法務局堺支局に
・岸和田市の不動産は、大阪法務局岸和田支局に
という感じです。
司法書士・行政書士吉田事務所の、相続登記の報酬基準では、基本報酬が66,000円。手間が被る分、2か所目の法務局については、司法書士報酬33,000円追加、とさせていただいています。
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土地の面積が、登記簿上と課税上で異なる場合 |
土地の面積について、登記上と課税上の数字が異なる場合、一部、公衆用道路扱いになっている可能性があります。評価証明書を取得することで、確認できます。
評価証明書上では、公衆用道路であれば、「〇〇uについては、地方税法348条第2項の規定(公衆用道路等)により非課税」と書かれています。
公衆用道路についても、相続登記で登録免許税は課税されます。
u単価に対して3/10で計算した数字を元に、課税価格を計算します。
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登記上の住所と本籍地が一致している場合 |
保存期間経過により、被相続人の最後の住所を証する書面、及び、登記簿上の住所地に住所があったことを証する書面が添付できない。また、権利証も紛失している、という場合、
1.昭和42年に登記された不動産については、登記上の住所と被相続人の本籍地が同一であること。その他の住所については、本籍地である登記簿上の住所から変更になったことが、住居表示実施証明(昭和43年に実施)で確認できること。
2.土地家屋名寄帳課税台帳の所有者の欄に、相続人の妻の氏名・住所の記載があること
結論として、法務局の見解は「別途の書類は付けなくて構わない」となりましたが、昭和42年であれば、住民票の制度が始まっていた可能性が高いため、法務局によっては、「本籍地と一緒というだけでは不可」と言われることもあります。
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土地の分筆をした上での相続登記 |
被相続人A名義のひとつの土地の上に、
1.被相続人さんA名義の建物
2.相続人Bさんの建物がある場合
は、土地の相続登記を入れる前に、土地を2つに割る登記=分筆の登記を、土地家屋調査士さんに入れてもらうことを検討します。
土地を相続人共有名義で残してしまうと、後々、親族間で名義が枝分かれしてしまい、名義を整理するために、土地の交換をしたり、金銭で買い取ったりという問題になる恐れがあるためです。
相続人Bさんの建物が建っている部分については、土地の名義もBさんになるように工夫して、相続による名義変更の登記を入れています。 |
戸籍上の死亡日の表記に注意 |
戸籍上の死亡日が、「年月日ころから年月日ころまでの間」となっていれば、相続登記を申請する時も、同様に入れます。
死亡届・死亡検案書上の死亡日の記載の仕方と、微妙に、戸籍上の表現が違うこともあります。
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堺市にある「三国ヶ丘」の住所について |
堺市には、「三国ヶ丘(みくにがおか)」が住所に含まれる地域が複数ありますが、「三国ヶ丘」の「ヶ」は、小さな「ヶ」です。
郵便局の郵便番号検索では大きな「ケ」となるため、司法書士の業務用ソフトでも、自動で「ケ」と入ってしまいますが、住民票上は小さな「ヶ」。
ちなみに、JR三国ケ丘駅は、大きな「ケ」が駅名に用いられています。
南海高野線の三国ヶ丘駅は、小さな「ヶ」となっています。
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相続税が課税される場合の相続登記 |
相続税が課税されることが確実な場合、「相続登記のみ」のご依頼であっても、一旦、税理士さんに確認してもらうようにしています。
相続で名義人になる方によって、小規模宅地等の80%の評価減が使える・使えないが生じることがあり、司法書士が先走って相続登記だけをしてしまったことで、税務上、不利益が出てはいけないため、です。 |
公衆用道路のみ被相続人名義で残っていた事例 |
公衆用道路は、固定資産税が課税されていないため、納税通知書には記載されていないことから、時々、登記漏れ=被相続人の名義のまま、土地が残ってしまっていた、という事例にあたります。
名寄帳(固定資産課税台帳)を取得することで、被相続人名義の不動産が残っていないかどうか、確認ができますが、不動産の名義変更がまだでも、台帳上の名義が相続人に書き換えられてしまっている、ということもあります。
また、地方の自治体によっては、手書きの台帳から、コンピューターに移記された際に漏れてしまっている、ということもありました。
100%の調査方法というのはありませんが、「念のために、市税事務所で名寄帳」という調査方法は、相続登記で不動産が漏れるリスクを防ぐために、有効な工程です。 |